「海外研修報告」
海外研修15 : 南京中医薬大学附属病院での不妊症研修
2007年11月20日から5日間、南京中医薬大学附属病院へ「周期療法」の研修に行ってきました。
私が店頭で日頃実践している「周期療法」は、1960年頃に中国で考えられてきた新しい治療法です。女性の性周期ホルモンを西洋医学的な理論と漢方医学的な理論を組み合わせた、いわば中西医結合の治療法です。
この理論を深く進め実践している「周期療法の第一人者」が南京中医薬大学婦人科教授、 <夏 桂成>先生なのです。もうお年は70代。中国では老中医といわれ、診察は「名医堂」という別棟での特別室で行われています。もちろん、診察料も特別料金で、一般の方の3倍程度ですが、遠くから飛行機で来院されたり、泊りがけで来られて大勢の患者さんでいっぱいです。
私は毎年11月のこの時期に夏教授のもとに研修に行き、今回で4回目の研修になります。
今回は朝8時から夕方6時までの集中講義「周期療法の基礎理論」を受けました。中医学は3000年もの歴史があり、古代からの「陰陽理論」「易経の理論」がありますが、その理論を充分理解していないと「周期療法」がうまく実践できないことがわかりました。奥深い理論です。
夏 桂成教授は「周期療法は進化し続ける」と言われていました。私も日頃の実践の中で 1年目よりも2年目、昨年よりも今年と、確実にステップアップしていることに、嬉しさと自信を感じた4回目の研修でした。
夏 先生の診察室には、診察を受ける患者、次の患者、次々の患者が入り、問診をする院生、教授の傍で処方を決める院生、その処方を最終的に夏先生がチェックする仕組みになっています。そこに我々研修団の8人、通訳をされる中医師が入っての大人数。日本の診察風景とは随分違います。患者さんにとってもたいへんな迷惑かと思いますが、とても協力的で、基礎体温表(BBT)やカルテ、検査データーも快く提示してくれました。
不妊症の患者さんがとても多く、その原因はPCOS,子宮内膜症、無月経などが多かったです。
皆さん、月経期、卵胞期、排卵期、高温期に分けてのお薬(すべて煎じ薬)を処方してもらっていました。おおよそが7日間の処方で経過を観察し、きめ細かく診ていかれます。私たち店頭では7日間単位の処方は難しいですが、これも今後の課題になりそうです。外来では、患者様へのアドバイスや症例のポイントなど、時間を割いての説明を受け、勉強になりました.
さらに、中国の産婦人科学会でも有名な<談 勇>教授の「子宮筋腫」「卵巣嚢腫」の講義を受けました。
談勇教授はかって旭川医科大学に6年間在籍されていただけに流暢な日本語での講義でした。私たちの講義のために午前3時までかって資料を作ったそうです。 その意気込みは多くのスライドに現われ、手術で摘出された「子宮筋腫」、巨大な「卵巣嚢腫」、卵管内で育たなくなった胎児の「子宮外妊娠」、「子宮の奇形」の写真など、目で見る学習には「凄い!」と感嘆した内容でした。「子宮筋腫」の原因と治療、「筋腫を持ちながらの妊娠」など、漢方薬を使うポイントを丁寧に講義してくださいました。
談勇先生の祖父も有名な産婦人科の医者だったそうです。残されていたたくさんの資料をみて、「現代に応用できる事がたくさんあった」と熱く語り、中西医結合で多くの患者さんを助けている談勇先生。手術をしながら、体力回復に、体質改善に、積極的な治療にと、漢方薬を巧みに操る談勇先生の存在はとても大きく逞しく感じました。